調査隊の業績
カッコ内は分析の対象となった調査を行った年
学術論文
1.
執筆者:大井徹、好廣眞一、東英生、手塚牧人、東滋
タイトル:ニホンザルの新センサス法、ブロック分割定点調査法の有効性.
収録雑誌:霊長類研究 10: 77-84. 1994年
分析対象年:1990年
区画の中に定点調査員を配置してニホンザルの集団密度や個体群密度を推定する新しい方法を開発した。調査域を500m四方の区画に分割した。調査員は区画全体を見渡せる場所で定点調査を行った。すべての調査員は同時に直接観察と音声情報をもとにサルの集団を探し、地図上に集団の動きを記録した。同一の集団を二つ以上の定点で観察する可能性があるため、調査員どうしはトランシーバーで連絡を取りあった。調査の終わりに、発見された集団の数を集計した。この方法は、一つの集団のサイズが数えられていれば個体群密度を推定する方法としても使用できる。ライントランセクト法の実施が難しい屋久島の急峻な山岳地帯で、調査経験のない学生が9.5km2の調査域でセンサスを行った。1回のセンサスでは、2-4 km2の調査域を7時から17時まで調査した。この調査域の中には、1973年以来の長期調査によって10から11群が生息していることが知られている。この調査域は方法の正確性を確認するために用いられた。方法の再現性を確認するため、三つの調査域がそれぞれ2ないし3回調査された。さらに、経験豊かな追跡者がサルの集団を追跡して集団の正確な位置を記録し、定点調査員による発見率を求めた。サルは多くの場合大きな音声によって発見され、75%の集団は7時の調査開始後3時間以内に発見された。また、調査開始後8時間を経過すると、新しく群れが発見されることはなかった。発見率はすべての定点調査員のうち実際に集団を発見した定点調査員の数の割合として計算した。発見率は定点から離れるにしたがって指数関数的に減少した。集団を発見した集団-定点間距離の最大値は720mであった。集団の分布が明らかになっている地域内での最初の調査日には、調査経験のない学生は20%の集団しか発見できなかったが、二日目には60-70%の集団を発見した。ほかの地域の調査でも同様の傾向であった。あらかじめ一日か二日の調査実習を行えば、調査経験のない学生でも十分な正確さと再現性を持って急峻な山岳地帯でこの方法は使用できると結論できる。この方法がもしほかの条件で使用される場合は、正確性の評価が第一に必要である。<原文は英文>
2.
執筆者:
Yoshihiro S, Furuichi T, Manda M, Ohkubo N, Kinoshita M, Agetsuma N, Azuma S, Matsubara H, Sugiura H, Hill D, Kido E, Kubo R, Matsushima K, Nakajima K, Maruhashi T, Oi T, Sprague D, Tanaka T, Tsukahara T & Takahata Y
(好廣眞一、古市剛史、萬田正治、大久保直利、木下真弓、揚妻直樹、東滋、松原始、杉浦秀樹、デービッド・ヒル、木戸悦子、久保律子、松嶋可奈、中島健介、丸橋珠樹、大井徹、デービッド・スプレイグ、田中俊明、塚原高広、高畑由起夫)
タイトル:
The distribution of wild Yakushima macaque (Macaca fuscata yakui) troops around the coast of Yakushima Island, Japan.
収録雑誌:霊長類研究14: 179-187. 1998年
分析対象年:1990、1991、1992、1993年
鹿児島県屋久島の海岸線から1〜2kmまでの地帯、計127.26km2において、ヤクシマザル(Macaca fuscata yakui)の野生群の分布状態を調査した。その結果、131群の存在が推定された。植生と群れの分布状況から、ヤクシマザルは自然の広葉樹林に強く依存する傾向が認められた。とくに自然植生が残っている西部海岸において群れの密度が最も高かった。センサスでは、合計1,852頭のヤクシマザルをカウントした。推計では、約2,000-2,850頭のサルが調査域内に生息するものと思われる。
3.
執筆者:好廣眞一、大竹勝、座馬耕一郎、半谷吾郎、松原始、谷村寧昭、久保律子、松嶋可奈、早川祥子、小島孝敏、平野晃史、高畑由起夫
タイトル:屋久島東部ヤクスギ林帯におけるヤクシマザルの分布と糞分析による食性の調査.
収録雑誌:霊長類研究14: 189-199. 1998年
分析対象年:1996年
ヤクシマザル(Macaca fuscata yakui)の野生群の分布調査を屋久島の標高1,020-1,830mの10.5km2の地域で行った。常緑広葉樹林とヤクスギ林の移行帯にあたる5km2の地域では、群れサイズは約20頭と大きく、遊動域も大きかった。群れ密度はおよそ0.7群/km2であった。群れの中には観光客によって餌付いているものもあった。標高1,260-1,830m、面積5.5km2のヤクスギ林内の調査地では、群れサイズも遊動域も小さく、群れ密度はおよそ1.4-1.5群/km2であった。糞分析によればこの地域のニホンザルは海岸部のサルより常緑樹の葉を多く食べていることが示唆された。<原文は英文>
4.
執筆者:Yoshihiro S, Ohtake M, Matsubara H, Zamma K, Hanya G, Tanimura Y, Kubota H, Kubo R, Arakane T, Hirata T, Furukawa M, Sato A & Takahata Y
(好廣眞一、大竹勝、松原始、座馬耕一郎、半谷吾郎、谷村寧昭、久保田裕之、久保律子、荒金辰浩、平田亨、古川真理、佐藤暁、高畑由起夫)
タイトル:Vertical distribution of wild Yakushima macaques (Macaca fuscata yakui) in the western area of Yakushima Island, Japan: preliminary report.
収録雑誌:Primates 40: 409-415. 1999年
分析対象年:1993、1994、1995年
ヤクシマザル(Macaca fuscata yakui)の野生群の分布調査を屋久島西部海岸部の23km2の地域で行った。調査結果はサルの分布が植生の垂直変化に応じてどのように変わるのかを探るために分析された。標高300m以下の低地部では、密度は1km2あたり4.8群ないし62.4-99.8頭と推定された。標高300-900mの中腹部では、群れ密度は1km2あたり1.3-1.6群まで低下した。低地部と中腹部では群れサイズに違いはなかったので、中腹部の個体群密度は1km2あたり30-36頭まで低下したことになる。一方、標高900-1,323mの国割岳山頂部では、密度は1km2あたり2.4群ないし36頭と推定された。<原文は英文>
5.
執筆者:Hanya G, Yoshihiro S, Zamma K, Kubo R & Takahata Y
(半谷吾郎、好廣眞一、座馬耕一郎、久保律子、高畑由起夫)
タイトル:
New method to census primate groups: estimating group density of Japanese macaques by point census.
収録雑誌:American Journal of Primatology 60: 43-56. 2003年
分析対象年:2000年
地形が急峻なために通常のライントランセクト法が行えない生息環境で霊長類の集団の密度を推定する新しい方法を開発した。この方法では、定点調査と集団追跡を同時に行った。定点で1時間の間に発見した集団の数nから、集団密度DはD=λn/πとして計算される。ただし、λは距離に依存した発見率g(y)をhalf-normal modelに回帰したときの定数であり、集団追跡と定点調査の情報を組み合わせることで計算できる。この方法を用いて屋久島のニホンザルの集団密度を推定した。7km2の調査域を500m四方の28の区画に分割した。それぞれの区画の中に定点を決め、そこにひとりの観察者を配置した。これらの定点は4ないし6日間にわたり6時ないし7時から15時ないし16時までのあいだ、同時に調査を行った。定点調査のあいだ、四つの群れを合計144時間にわたって追跡した。集団・定点間の距離と発見率の関係は、half-normal modelによく適合した。発見率定数は時間帯によって異なったが、群れや地形要因による違いはなかった。集団密度の95%信頼区間は撹乱地、および自然林でそれぞれ1.48±0.61集団/km2、0.701±0.432集団/km2と計算された。遊動域から計算された「真の」集団密度は、二つの群れについては各々の群れの遊動域内の定点での定点調査から計算された推定密度の信頼区画の中にあった。この方法は、定点調査の基本的仮定を満たし、群れや地形によって影響を受けないことから、少なくとも一つの集団が追跡可能であればほかの種にも適応できる。<原文は英文>
6. 2005年度Ecological Research論文賞受賞論文 授賞式の様子
執筆者: Hanya G, Yoshihiro S, Zamma K, Matsubara H, Ohtake M, Kubo R, Noma N, Agetsuma N & Takahata Y
(半谷吾郎、好廣眞一、座馬耕一郎、松原始、大竹勝、久保律子、野間直彦、揚妻直樹、高畑由起夫)
タイトル:Environmental determinants of the altitudinal variations in relative group densities of the Japanese macaques on Yakushima.
収録雑誌:Ecological Research 19: 485-493. 2004年
分析対象年:1993、1994、1995、1997、2000年
屋久島のニホンザルの相対集団密度の標高による変異を調査した。この調査地には、捕食者、潜在的に競合関係にある近縁種、過去の災害など、定量化が難しいが動物の密度に影響を与える可能性がある要因の影響を無視できるという利点がある。相対集団密度は標高0-400 mの海岸部で高く、その他の標高帯(400-800 m、800-1200 m、1200-1886 m)のあいだでは差がなかった。この密度の変異の要因を明らかにするため、単位面積あたりの食物樹の基底面積、果実の利用可能性の季節変化、液果の年間総生産量の3つの環境指標を標高によって比較した。いずれの指標を用いていも、果実または種子食物は海岸部でもっとも豊富だった。つまり、屋久島のニホンザルの密度の標高による変異は、年間を通じた食物の利用可能性によって決まっている。<原文は英文>
7.
執筆者: Hanya G, Zamma K, Hayaishi S, Yoshihiro S, Tsuriya Y, Sugaya S, Kanaoka MM, Hayakawa S & Takahata Y
(半谷吾郎、座馬耕一郎、早石周平、好廣眞一、釣谷洋輔、菅谷周司、金岡雅浩、早川祥子、高畑由起夫)
タイトル:Comparisons of food availability and density of Japanese macaques in primary, naturally regenerated and plantation forests.
収録雑誌:American Journal of Primatology 66: 245-262. 2005年
分析対象年:2000、2001、2001、2003年
屋久島のニホンザルの食物利用可能性と密度を自然林と二つの異なる方法で更新された伐採地の間で比較した。調査地には伐採されていない国立公園、7−18年前に伐採されてその後自然に更新された地域(天然更新地)、19−27年前に伐採されてその後スギが植林された地域が含まれる(人工更新地)。人工更新地は少数の大きなスギの木からなり、天然更新地は多数の小さな木から構成されていた。自然林の基底断面積合計と木の本数はほぼ人工更新地と同様であった。年間の総果実生産量は天然更新地で最大で、自然林で中間であり、人工更新地ではほとんどゼロだった。草本の利用可能性は天然更新地で高く、人工更新地と自然林で低かった。ニホンザルの集団密度は天然更新地で高く、自然林では中間であり、人工更新地で低かった。天然更新地の集団サイズは小さかったので、個体密度は天然更新地と自然林でほとんど差がなかった。この結果は、更新の方法によってニホンザルへの影響が異なることを示している。人工更新地は、花だけしか食物を供給しないスギだけから構成されており、サルの密度も低かった。一方、天然更新地では果実生産と草本の利用可能性が高く、サルの密度も高かった。果実生産と草本の利用可能性の向上は、伐採後の光条件の改善によるものと考えられる。<原文は英文>Key words: Cryptomeria japonica; expansive afforestation; frugivore; logging; natural regeneration; plantation
8.
執筆者:Hayaishi S & Kawamoto Y
(早石周平、川本芳)
タイトル:Low genetic diversity and biased distribution of mitochondrial DNA haplotypes in the Japanese macaque (Macaca fuscata yakui) on Yakushima Island
収録雑誌:Primates 47: 158-164. 2006年. DOI:10.1007/s10329-005-0169-1
調査域内における試料採集年:2000年
ヤクシマザルは屋久島に固有のニホンザルの亜種である。地理的に近い九州本土のニホンザルとの系統関係を明らかにするために、島内一円から集めた糞を使って、ミトコンドリアDNAのコントロール領域203塩基の配列を調べた。その結果280個体分の試料から、6つの変異タイプが観察された。いずれのタイプも九州本土で得られた配列と異なっており、ヤクシマザルは単系統であることが判明した。塩基多様度は低く、0.0021だった。280個体分の配列を比較したところ、屋久島集団が急速に個体数を拡大したことを示唆した。 また、これはボトルネック効果に関連があると推測された。6変異タイプの島内分布は均一ではなかった。1変異タイプは広く見つかるが、その他の5変異タイプは低地だけに見つかった。低い遺伝的多様性と偏った地理的分布は、およそ7,300年前起こった火山活動と、その後の島の生物の回復過程と関係があると考えられた。<原文は英文>Keywords: Bottleneck; Low genetic diversity; Macaca fuscata yakui; MtDNA; Phylogeography
9.
執筆者: Hanya G, Matsubara M, Hayaishi S, Zamma K, Yoshihiro S, Kanaoka MM, Sugaya S, Kiyono M, Nagai M, Tsuriya Y, Hayakawa S, Suzuki M, Yokota T, Kondo D &Takahata Y
(半谷吾郎、松原幹、早石周平、座馬耕一郎、好廣眞一、金岡雅浩、菅谷周司、清野未恵子、永井真紀子、釣谷洋輔、早川祥子、鈴木真理子、横田高士、近藤大介、高畑由起夫)
タイトル:Food conditions, competitive regime, and female social relationships in Japanese macaques: within-population variation on Yakushima.
収録雑誌:Primaets(印刷中)
分析対象年:2000、2001、2002、2003、2004、2005、2006年
屋久島のニホンザルの食物条件、採食競合のパターン、メスの社会関係を、海岸部(標高0-200m)と、ヤクスギ林(標高1000-1200m)に生息する群れのあいだで比較した。果実の利用可能性は海岸部で高かった。群れ内の採食中の攻撃頻度には、生息地間で一貫した傾向がなかった。海岸部では、ヤクスギ林に比べて群れ間の出会いの頻度が高く、攻撃的な出会いが多いため、より群れ間の競合が激しいと考えられた。出産率は、海岸部では大きな群れで高い傾向があったが、ヤクスギ林ではそのような傾向は見られなかった。採食競合のパターンにこのように違いがあるにもかかわらず、メス間の社会関係、たとえば毛づくろいの方向性や、特定の個体への集中度、順位の直線性、攻撃時の反撃や血縁者への援助などには、生息地間でまったく違いが見られなかった。この結果は、ニホンザルのメスの社会関係は安定であり、現在の環境の変化に対して柔軟に変化しているわけではないことを示している。<原文は英文>Key words: socioecology, feeding competition, within-group contest, between-group contes
書籍
1. 半谷吾郎、座馬耕一郎、好廣眞一 (2000) サルの分布を決めるもの. 高畑由起夫、山極寿一編著「ニホンザルの自然社会 エコミュージアムとしての屋久島」第一章 pp11-32. 京都大学学術出版会、京都.
2. 半谷吾郎 (2002) 分布南限の島. 大井徹、増井憲一編著「ニホンザルの自然誌」第十三章 pp229-250. 東海大学出版会、東京.
その他の記事
1. 半谷吾郎 (2001) 屋久島自然系その5 屋久島のニホンザルの分布. 季刊生命の島55: 68-71. [1990、1991、1992、1993、1994、1995、1997年]
2. 半谷吾郎 (2003) レッドリストの生き物たち4 「ヤクシマザル」 林業技術733: 38-39.
3. 半谷吾郎 (2003) 屋久島に追う野生ニホンザルの社会 エコソフィア 12: 20-26.
賞罰
2005年
1.2005年度Ecological Research論文賞受賞論文
2.2005年度日本霊長類学会学術奨励賞(高島賞)
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